■『もののけ姫』
アシタカは、呪いが解けても故郷の村に帰らない。
けっきょくヤツは、未来の村の長としての責任を投げ出して、惚れた女(サン)を取ったのだ。
それだけならまだいい。
故郷を捨て、家族や親族を捨てて愛した人を選ぶというのはまだ理解の範疇ではある。
しかし、アシタカはそんな一途なヤツじゃないのだ。
思い出してほしい。物語の冒頭部分でアシタカが村を出るときのことを。
アシタカはカヤという少女に呼び止められる。
そして、彼女は「いつまでもお慕い申しております」と "愛の告白" と言ってよいセリフを言う。
それに対してアシタカは、「私も、いつもお前を忘れない」的なことを言うのだ。
よく言うぜ。
この男。カヤにそんなことを言っておきながら、サンに走るのだよ。
まだある。
これは、自分も記憶に残っていなくて人から聞いたのだが、村を出るアシタカにカヤは小刀を渡す。
おそらく「守刀」というか、「自分だと思って持っていってくれ」ということだったのだろう。
しかし、アシタカはカヤから渡されたその小刀をサンに渡してしまうのというのだ。
それ、一番やったらアカンやつ!
不要なら捨てろよ!
「俺からだ」と言わんばかりに別の女性に渡したらダメだろうが。
知らぬはサンばかりだ。いや、カヤもか。
とにかくだ。
サンよ! そいつは、そういう男だぞ! 気をつけろ!
■『天空の城ラピュタ』
パズーとシータがグライダーのような乗り物で嵐を抜けて、ラピュタに着陸した後。
「ひたきの巣」を乗り物で潰していないかを気にするシータ。
「卵が割れてなくてよかった」って安堵してたじゃないか。
そんなに繊細に気にしていたのに、ラストではあっさり「バルス!」って……。
言うときに、「ひたきの巣」のことをちょっとは気にしたのか?
ラピュタで生きていたのは、ひたきだけじゃない。
ネズミみたいなのもいたし、シーラカンスみたいな魚もいたよね。
虫やトカゲのようなのもいたし、「ナウシカのリス」(あいつは何ていう動物だ?)もいた。
ムスカたちの基地では、ロボットが砲撃で破壊されて泣いてたのに。
ロボットが壊れても泣いていた子が、そういう諸々の生命に対する躊躇もみせず「バルス!」だよ。
鳥みたいなのもいたけど、飛べるヤツらはまだいい。
でもその他大勢は……ねぇ。
たぶん、最終的にラピュタは、成層圏を越えていくのだろう。
もし、生き残っていたヤツらがいたとしても末路は決まっている。
というか、あれだけの勢いで崩壊したら、大半が巻き込まれ、下敷きおよび落下しているのだろうが。
おそらく、シータは、そのときどきは本気で「悲しい」「辛い」「ひどい」と感じて嘆いているのだろう。
しかし、それを「この悲劇をなんとか回避できないか」、「自分にできることは何かないか」といった方向には、彼女はもっていかない。
ただただ、嘆くのだ。
その都度が本当に嘆いているから、かえってタチが悪い。
で、最後の最後は「バルス!」だ。
あれほど他の命のために嘆いていたのに、最後は「このままではダメだから、全部壊す!」と考えるのだ。
パズー! シータはそういうところがある子だぞ! 気をつけろ!
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