その "確信犯" は、「普通に犯罪者」です。
僕は推理小説が好きなので、「犯罪者」や「犯人」という言葉が使いにくくなるのは困るのよ。
あるネットニュースによると、文化庁が公開している平成27年度「国語に関する世論調査」の結果では、「確信犯」の正しい意味を答えた人の割合は17%。誤用している人の割合は69.4%だったそう。
「確信犯」の意味を約7割の人が間違えているという話。
・「確信犯」の誤用とされる意味
悪いことであるとわかっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人
・「確信犯」の意味(出典:広辞苑第四版)
道徳的・宗教的または政治的確信に基づいて行われる犯罪
手元に古い広辞苑しかないので、いまは違った意味が書いてあるかもしれないけど、ようするに、確信犯の誤用とは「悪いとわかっていて、悪いことをするのが "確信犯"」だとするもの。
「誰もが誤用していたら、それがいつのまにか正しい用法になっていくものだ」といった主張をする人もいる。
ところが、ところがですね。
「確信犯」に関していえば、その認識はおかしい。
ちょっと落ち着いて考えればわかる。
だって、悪いとわかっているからバレないようにしたり、逃げたり、隠れたり、証拠隠滅を図ったり、自首や出頭をするわけでしょうが。
(推理小説好きの良い子なら、自首と出頭の違いはわかるよね。)
それって普通の話だ。"普通" というのも変だけど、"普通の犯人" だ。
書くにしても、話すにしてもわざわざ "確信犯" と表す意味がない。
悪いことをして、バレないようにし、逃げ・隠れ・証拠隠滅を図り、ときには出頭・自首すると、みんな「確信犯」になっちゃう。
だって、悪いと思っていたからそうするんだからさ。
ワイドショーやニュースだって困るぞ。
「ここでAさんを殴ったあと、"確信犯" はどの方向へ逃亡したのでしょうか」
とか……
「先月起きた、X駅前での刺殺事件の "確信犯" が逃亡してから1週間になります。"確信犯" 確保に向けて、警察による捜査はまだ続けられています」
とかなるし。
みんな "悪い" とわかっていることをやっちゃったから逃げたんだからねえ。その人というか人たちというかは、"確信犯" ですよ。
「名探偵、皆を集めてさてといい」というシーンも面白くなくなるよ。
「Y氏殺害におけるトリックは、以上のようです。これにより確信犯はみごと容疑者に含まれることなく、この屋敷内に留まることに成功しました。容疑者から外れるためだけに、これほどの危険を犯すのかという疑問があるかもしませんが、 確信犯にとっては、"容疑者から外れた最初の人物" になることこそがなによりも重要だったのです。」
とかなんとか。
"確信犯" という言葉が、悪いと思って何かやるという意味になってしまわないように切に願うのです。
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