イルカは海獣です。
10月5日の『ダーウィンが来た』(NHK)で、小笠原のイルカが取り上げられていた。
(日付が間違っていることに後で気づいた。今日は1日なのに。自分のうっかりが面白いからこのままにしておく。正しくは2013年9月29日)
漂う海藻を口でひっかけたり、海底のナマコをボールのように扱ったりをする行動は、「遊び」らしい。イルカの知能は高いという話をよく聞くけど、それを思わせる行動だった。
でも、オスイルカの生殖の準備に驚いた。
メスのイルカは子供といると生殖の行動をとらなくなるのだとか。なので、オスたちは子供イルカをメスから離そうと突いたり、沿うように泳ぐのを邪魔したりするのだ。
それに対してメスのイルカは特に子供を保護するためにオスたちに抵抗したりはしない。
さらに、子供イルカを母親から離すことに成功しても、オスイルカたちの行動はそれだけでは終わらない。
彼らは子供イルカを「攻撃」するのだ。
いやぁ、あれには驚いた。ほんとに「攻撃」するんだもの。
イルカショーで見られるジャンプのように水中で身体を回転させると、勢いがついた尾を子供イルカに叩き付けたりする。
あれは痛いぞ。
ここでもメスイルカは子供イルカを守ろうとするような動きはみせない。
相手は、まだまだ体格の小さい子供イルカだ。当然、大人のオスイルカの一撃でよろよろになる。二発ほどくらうと、動かなくなって静かに沈んでいく場面もあった。
「ええっ! 殺っちゃったの!?」って驚いていると、全身を震わせて再び泳ぎだした。やはり、強烈な衝撃で一瞬気絶していたようだ。
「あのメスはオレのものだ」という気持ちを満たすために、オスのイルカたちも酷なことをするものだと思ったけど、それはこっちの勝手な擬人化にすぎない。
彼らは海獣なんだ。野生の。
本能なのであって、攻撃するオスも子供を守ろうとしないメスも特別に残酷な感情をもった生き物だというわけではない。
イルカの群れが生き残り、子孫を残すためには大人のオスイルカたちの子供イルカへの攻撃は必要なのだろう。そうやって生き残った子供イルカがより強いイルカだということなのか……
それにしても、可愛い顔をしているだけにあの尾っぽでのぶっ叩きにはびっくりしたよ。
重ねていうけど、彼らは野生の動物であって、可愛くて人懐っこくて優しいお友達になるために生きているのではないのだ。
生き残るためには戦いもし、攻撃もする。
テレビでイルカを扱うと、可愛いさや利発さ、平和的な印象を与える映し方がなぜか多いけれど、なかなか正直な映像を見せてもらった。さすがNHKってところか。
でも、攻撃ばかりするのがイルカじゃない。メスイルカが子供イルカを支えて海面近くに押してやる行動もカメラは捉えていた。まだ巧くない呼吸を助けているらしい。
あるいは、同じイルカでも異なる種類のイルカの子供にお乳を与える場面もあった。イルカの研究をしている人たちの間でも、かなり珍しい光景らしい。
そして、そんな行動だけがこれまたイルカではない。子供イルカに尾をぶつけることもあるのだ。どちらもイルカの本当だ。
何日か前に、英セント・アンドリューズ大学(University of St Andrews)生物学部、海洋哺乳類研究ユニット(Sea Mammal Research Unit)の報告がニュースになった。
バンドウイルカはときには、単独で捕食を目的としていない行動をし、小型のネズミイルカを殺害することを発見したのだとか。また、6年間の調査のなかでは、若いオスのイルカの一団が他のオスイルカにのしかかって、互いに血を流す戦いになるのも目撃したとか。
このニュースの元になった報告を、Sea Mammal Research Unit のサイトで探したけど僕には見つけられなかった。なので、そのニュースの裏付けをはっきりと示すことができない。
確かなことは、イルカに限らず野生動物はどんなに可愛く見えても、平和的で人間にまったく害をなさない生き物だとは言い切れないということ。必要となれば、攻撃の矛先は人間にも向くだろう。
だから、イルカに触れ合いにいく人は、もしものことを考えて彼らを刺激しない行動を取ったほうがよいと思う。あるいは、場合によっては攻撃を受けてケガをするような目に遭うことも覚悟で行くべきだと思う。
また、そういうサービスを提供している人たちも、野生動物としてのイルカを忘れないようにし、お客さんが襲われたりする事故がないように気を配るべきだと思ったしだい。
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