Kindle Paperwhite が届いた。注文したときは発送が1月6日ってなってたけど、早く届いて嬉しいぞ。
Kindle Fire HD を買った知り合いの作業を手伝ったものだから、昨日は Kindle Fire HD の MAC アドレス確認などについて書いておいたけど、僕自身が注文したのは Kindle Paperwhite 。
発売後に Amazon のレビューやいろんなところで Kindle Paperwhite の感想を見ていて思ったのは、「重い」、「重すぎる」と評する人たちがぽろぽろいるなぁってこと。
Amazon のサイトにある仕様によれば、 Kindle Paperwhite の重量は213g。個人的にはこの数値そのものは「重い」とか「重すぎる」とは思わないけど、持ってみた感じは結構ずっしりと重く感じます。量ってみるとうちの測りでは211gでした。
仕様よりちょっと軽い。
手元にある本の重さも量ってみました。角川書店から出ている『デフレの正体――経済は「人口の波」で動く』(藻谷浩介)が同じ211g。
僕は鞄に入れて、通勤や休日などで電車での移動時に読んでいたけど、この本を入れたからといって、鞄が重くなったと感じたことはないし、片手で吊り革を、もう一方でこの本を持っているときも重いと思ったことはなかったです。
でも、Kindle Paperwhite の方がなぜか重く感じる。たぶん、質感と固さによる錯覚かなと。本は持つと曲がるので、手のひらでしっかりと受け止めるように重さを支えることができるからかな。
などと考えていたらちょっと面白いことに気づきました。Kindle Paperwhite の下部に、 kindle とロゴが入っているけど、どうもそのあたりを重くしているよう。普通に持ってみる――このとき人差し指が Kindle Paperwhite の上辺の裏にあたって少し重さを支えています――のと、天地を逆にして、ロゴが入った部分が上にくるように持ってみる――同じように人差し指を立てて kindle のロゴがある裏あたりを支えています――のとでは、後者の方がいくらか軽い気が僕にはします。
本体の一部が少し重めになっているというのが「同じ重さの本よりも重く感じる」原因か? たぶん、正位置で持ったときの安定化のために重みを偏らせているのだろうけど。
手元にある本と同じ重さなのに Kindle Paperwhite はなぜ重く感じるのだろうと考えていて、重く感じる人たちには4つのパターンがあるような気がしてきました。
1つは、持ち運べる軽さへの期待が高すぎて重いと感じる人たち。期待する重さのイメージが実物よりも軽かったから、実物を持つと重いと感じてしまった人たちがいるような気がします。
このような人たちのなかには、本を持ち歩くことに慣れていない人もいるかもしれないなぁ。本一冊の重さのイメージがうまくできなくて、Kindle Paperwhite を「重い」と感じているというような。
もう1つは、本を持ち歩くときはたいてい文庫本が多い人たち。
僕が持っている文庫本で一番重かったのは、河出書房新社の『憂鬱と官能を教えた学校 上 【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀照合音楽史』で、これが192g。
ちなみに、書店でつけてくれたカバーをはめると199gになります。誤解がないように付け加えておくと、カバーというのは書店名が印字されているごく当たり前の薄い紙製のもの。
何冊か文庫を量ってみたけど、200g以上のものは僕の手元になかった。(「デフレの正体」は新書サイズ)
そのあたりの重さの文庫本を持ち慣れている人は、200gを超えている Kindle Paperwhite は重いと感じるのかもしれません。
3つ目の人たちは、手首への重さのかかり具合を気にしている人たち。
電車のなかで立って読んでいるようなつもりで、文庫本を開いて片手で持ってみると、僕の場合はそのときどきで2つの持ち方をします。
A. 開いた左右のページが閉じてこないように親指と小指で押さえ、残った3本の指は中指を中心に本の背を支える持ち方。
B. 親指を見開きの中央(「のど」って言うらしい)のところに置いて左右のページが閉じてこないように押さえ、本の背を人差し指の第二関のあたりに軽く乗せるというか、親指と曲げた人差し指の脇で本を挟むというかのような持ち方。(このとき、手のひらは軽く握るような形になる)
それぞれの持ち方をして、手首への本の重さのかかり具合をちょっと覚えておく。次に本を閉じて表紙を自分のほうに向けて手のひらで包むように持ってみます。 Kindle Paperwhite の画面を見るつもりで。このときの手首への重さのかかり具合は、A,B の持ち方をする場合よりも僕は重く感じました。
A,B の持ち方のかなめは、指で重さを支えていることかな。本を支えるのに手首にはほとんど力がいらない。
A の場合は、手首が甲のほうに折れて引っかかるような感じで止まります。B の場合も人差し指と本の背が接している部分を支点に、親指に引っかかっているだけ。後者では手のひらを軽く握った形になりますが、中指から小指までの残り3本を開いてしまっても、文庫本ぐらいなら親指と人差し指の二本で落とさず持ち続けられます。
またどちらの持ち方も、読んでいる途中で本をもっと自分の方へ傾けたい場合も手首の力をたいして使いません。
A の場合は、本の背に当てている3本の指を付け根から起こすようにちょっと曲げれば、自分の方を向けられます。B の場合は、親指の第一関節を本の側に向かって押し込むように曲げれば、立ち上がるように本の角度があがって自分の方を向く。
ところが、Kindle Paperwhite を本のように指の支えをつかわず手で持つと、文字を読める角度で自分のほうを向けようとすると、手首を少し立てることが必要。つまり、Kindle Paperwhite を片手で包み込むように持っている場合、本体をちょうどいい角度にするのには、本の場合はほとんど気にしていなかった「手首で支える」動作が必要になるということ。
そこへ Kindle Paperwhite は、先にもふれたように kindle のロゴがあるあたりが少し重くなっているようなので、手への重さのかかり具合が本と変わってきます。
本ではどこかが特に重いということはまぁないから、Kindle のロゴのあたりの重さを支えないといけなくなることも、同じ重さの本よりも重く感じる理由の1つかも。
「本と違って全体のなかで重さが異なる部分がある。本のときにはたいして必要なかった手首に力を入れる機会が増える」――この2つが Kindle Paperwhite が「重い」「重すぎる」となる要因じゃないかなと僕は想像しています。
Kindle Paperwhite が重いか重くないかということではなく、「重く感じる」人がいるのだから、今後はそう感じない重量までさらに下げられればいいのにと確かに思います。
でも、Kindle Paperwhite の短所として重さをあげるのはちょっと言い過ぎな気もします。
で、4つ目の人たちが僕のように錯覚を起こしている人たち。
有名な話だから知っている人も多いだろうけど、「黒いものは重く感じる」のだそうな。 Kindle Paperwhite は黒い。あの本体色によって実際の重さよりも重く感じている人がいるように思えます。
この先、Amazonが異なる色の Kindle Paperwhite を出したとしたら、そのときはいまよりも「重い」と感じる人が少なくなるかも。ひょっとしたら、実は同じ重量なのに「前の機種よりちょっと軽い」なんて言う人も出たりして――
錯覚による重さについてなにかと探していたら、マジシャンの前田知洋さんが書いている記事を見つけました。
前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” ― 第5回 『iPhoneやAndroid、モバイル機器の重さの秘密』
という記事。
マッチ箱の実験の話が面白い。板倉聖宣さんという方の著書『科学的とはどういうことか』から、前田さんが引用して紹介してくれているもの。
リンク先がいつまであるかわからないから、抜き出しておくと――
(引用の引用だからあまりいいことじゃないけどねぇ)
1.マッチ箱やホッチキス針の箱など、同じ種類の空箱を2つ用意する。片手で持ち上げるサイズの箱が適している。
2.ひとつに十円硬貨を一杯にいれる。もう一方は空にしておく。
3.2つの箱を重ねてテーブルに置く。このとき、十円硬貨を入れた箱を上にしておく。
4.2つの箱をまとめて片手で5秒ほど持ち上げ、重さの感覚を覚えておく。
5.次に上側(十円硬貨を入れた箱)だけを同じように5秒ほど持ち上げる。
6.そうすると、十円硬貨を入れた箱を1つだけを持った後者の場合のほうが、前者の場合よりも重く感じる。空箱を持っていないのだから、その分だけ軽く感じるはずなのにそうならない。この実験からわかることは、人間は外観が小さく見えるデザインのものは重く感じるということ。
Kindle Paperwhite が小さいと言えるかどうかも意見がわかれるところだろうけど、実際の重さよりも重く感じることがあのサイズによって起こっているかもしれない。
(なんか、「かも」とか「かもしれない」ってばかり書いてるなぁ。語彙が乏しいのって情けないねぇ)
そこでだ。Kindle Paperwhite が重いと感じる人に面白そうな提案を一つ。といっても、これも前田さんの記事から引用だけど。それは「カバーを付ける」こと。
「ただでさへ重いのに、カバーってなんだよ!」と怒らないでいただきたい。
前田さんが書いている例は、重厚な金属のように見えるけど、9gのプラスチック製カバーを iPhone に付けると、見た目は重く見えるので持ったときには軽く感じるというもの。
これを読んでくれた人は、まだ上記リンク先が生きていたら、そこにあるカバー付き iPhone の写真を見てみて。
9gのカバーだとは思えないぐらい重そうに見えるから。
前田さん言うに、"脳はカバー+本体の重さを想定しようとするので、実際の重量よりも軽く感じることになる" のだとか。
重厚なデザインのカバー(実際には見た目ほど重くない)を探して、Kindle Paperwhite に付けてみると、持ったときには軽く感じる――かもしれない。
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