「No.1スピードミステリー日本上陸」という煽りに惹かれて面白そうと思ってたのだけど、第1話の演出というか脚本というかがグダグダに感じて、以降はあまり見なくなってしまった『オルトロスの犬』。
途中はちらちらとは見ていたのだけど、1つの話しを通して見たことはなかった。
上陸なんて大げさに言ってるけど、海外のドラマでもなんでもない。念のため。
(もうこのあたりから出来のほどが伺えるようないかがわしさが漂ってるなぁ)
ラスト2話は前編後編という構成。最後くらいは見届けようと見ていたら、前編で僕としてはびっくりな展開が。
第1話を見た後で、がっかりして投げやりな気分で書いたことが当たってしまった。――素人が思いつくような展開をひねりも無しにやってしまうあまりのベタベタぶりに乾いた笑いを浮かべるしかない。
"「視聴者にぜったい先を読ませない」スピードミステリー" ってオフィシャルサイトに書いてあるだけに。
それでも、最後の最後にどんでん返しがあるかもしれないと、少しは期待していたのだけど。――無かったなぁ。
ということで、最終回の感想はぼろくそに書くから、番組が面白かったと思った人は、ここから先は読まないように。ネタバレもあるから視てない人は心して。
竜崎の「触れるだけでどんな傷や病も治してしまう力」について、子供を使ったありがちでやたら説教くさいシーンもあって、しらけてしまった。
自分を助けてくれる力を大人は奪い合うけど、子供は譲り合う……って、そんなはっきり役者にシーンの意味を口にさせるなよ。そういうのを「説明口調」っていうんだ。シーンの意味を説明すると、どうしたって説教くさくなる。
視ている側にはわかりやすいって配慮か。視聴者を馬鹿にするなよ。
ラスト2話になって明かされた竜崎の秘密が、「自分で自分を治癒できる」ということ。それまでは自分は治せないと竜崎が嘘をついていた。
竜崎を殺したければ、頭や心臓を狙って一瞬で命を奪わないと彼は死なないって……その前提にしておきたい気持ちはわかるけど、無理だぞ。水に沈めるとか、先に意識を奪っておくとかさ。いろいろ思いつくだろうに。
竜崎でも、死んだら生き返らせることはできないし。
周囲を騙して隠していたくらいだから、大きな展開の鍵になるのかなぁと思ってたら、以後は何にも関わってこない。なんじゃそれは。
結局、大怪我をした竜崎が動けないままでは話しにならないから、「自分も治すことができる」って設定を取って付けたようなもんじゃないか。
竜崎が生まれた村へ刑事が行くシーン。
かつての村はダムの底。ダムへ行くまでの道路は、なんだかんだあって、警察が封鎖中。それでも、「以前も村を出るときはここを通ったんだ」と二宮に案内されて山中の裏道を行く刑事。
その途中、1人の警官に見つかってしまう2人。とっさに二宮が警官を抑えて、「早く行け!」……
あのさぁ。案内が必要な道の先を、なんで土地勘の無い刑事が1人で行けるんだ。
それに、ダムへ通じる裏道があるってことを警察は知ってたから警官がそこにいたんだろうに。封鎖するなら、もうちょっと多めの人数を配置するだろう。
世間にはほとんど知られていない道だから警官の配置も少なかったということか。だったら、なおさら刑事が1人でダムまでたどり着けるのはおかしいだろう。
まだあるぞ。ダムでのシーンがもう疑問だらけ。
竜崎。左胸を撃たれたけど、心臓ではなかったのか。先に「竜崎を殺すなら……」ってやりとりが有ったんだから、左胸を撃たれたら、視ている方は心臓を撃たれたと思うだろう。
ダムに落ちそうになる竜崎の手を握る碧井。それをその場にいた刑事が一切手助けに来ない。すごく離れた場所にいたわけではないのに。走り寄ってこれる近さだったぞ。
刑事でなくても、ダムに落ちそうな人がいたら、普通は助けようとするだろうに。
結局、竜崎と共に碧井も貯水に落下。水中で竜崎が「お前の手で死にたい」みたいなことを目線? で伝える。まぁそれはいい。以心伝心って言葉もある。なんとなく伝わるってこともあるだろう。
だけど、碧井の反応が納得いかん。何の躊躇もなく竜崎に触れて、「触れるだけで命を奪える力」を発動させる。
ウッソー。やっちゃうの? という気がした。
竜崎の命は奪わないみたいなことを、落ちる前には言ってたじゃん。
落ちてしまわないように竜崎の手を握って助けたじゃん。
「やったわかり合えたのに……」みたいなこと言ってたし。
なのに、やっちゃうんだ。
貯水に落ちるまでの10秒も無い間に、何の心境の変化があったんだ。
事件が終わって1年後。「神の手は悪魔の手の力を消せるということだと思ったんです」とか碧井が言ってたけど、「いろいろ考えてそう思い至るようになった」って感じだったし、それはダムの時じゃないよな。
ダムに落ちたときに、そんなことを考えてるそぶりはなかったぞ。
一番わからないのは最後の最後。あの河川敷のシーンは、作り手は何がしたかったんだろう。
あの場所で、あの距離と角度ですれ違って、お互いに気がつかないって演出は無理があるぞ。碧井は土手を真っ直ぐに歩き、竜崎は河川敷から土手を上って来たし。何をどうしたって、互いの視線に入るだろうが。
わざと気がつかない振りをしたのか。そんな理由や心理描写がどこに描かれていたんだ。
それとも、亡くなったけど、魂だけは帰ってきたって感じにしたかったのか。左胸を狙撃銃で撃ち抜かれていたんだし。――そうだとしても、そうは見えなかったけど。
撃たれてダムに落ちても無事でしたというもの有ってもいいだろう。そういう展開だって無理ではない。でもだったら、左胸の傷をどうやって治したんだ? 銃で撃ち抜かれたんだぞ。弾丸が心臓から逸れていたんだとしても、肺は貫通しているぞ。
それに、碧井の言うことがもしダムでのことなら、彼の力を使ったら竜崎の治癒の力はそのときに無くなってるし。あるいは、治癒の力は消えていなかったということか。
訳がわからん。
オルトロスの犬には原作は無くて、複数の脚本家が台本を作って、メインの脚本家がまとめていくというやり方をしていたのだとか。アメリカでは『ショーランナー』と呼ばれて、あちらの人気ドラマは、そのやり方を採っているのが多いのだそう。
海外の人気ドラマと同じやり方をしたからといって面白いドラマになるわけではないというとっても当たり前のことを、あらためて証明しちゃったな……
でもなぁ。無理もないかもしれんとも思う。
脚本や演出の制作側がいくらちゃんと作ろうと思っていても、相手はジャニーズ事務所だ。
うちのタレントをこうしてくれ、ああしてくれるなと注文を付けられたら、そうせずにいかんだろうしなぁ。
制作陣は真摯にいいドラマを作ろうとしていたのだけど、そういう圧力もあってのあの結果だろうと思いたいよ。
みなさんプロフェッショナルだもん。
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