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Pat Travers をご存じか。

Pat Travers(パット・トラバース)をご存じだろうか。
「知る人ぞ知る」と言って過言ではない。「伝説の……」と言って過大ではない猛烈にかっこいいギタリストである。

若かりし頃、僕が彼を最初に見たのはテレビでだった。
もうちゃんと覚えてないけど、確か海外アーティストのプロモーションビデオを紹介する番組だったと思う。

そこで、僕は彼の "Hooked On Music" を見たのだ。
いっぱつでやられてしまった。

翌日、友人たちに「パット・トラバースって知ってるか? 無茶苦茶かっこいいぞ」と、さもオレは知ってたぜという感じで吹聴しまくった。
でも、初めてみたくせに知ってたようなそぶりをしたのがいけなかったのかもしれない。友人たちはいまひとつ興味を示さなかった。

否、正直に言おう。僕の表現の仕方が悪かったのだ。

パット・トラバースの演奏。そのすさまじいほどの緊張感と目の(耳の?)離せないスリリングさ。

そう「スリリング」だ。

その当時の僕は、「スリリング」という表現を知らなかった。
だから、友人たちにどんな感じだったかと話す際に、「ナイフの刃の上を渡っていて、今にも落ちそうな、切れそうなで、でも落ちない・切れないっていうギリギリのところでナイフの先まで刃の上を渡っていく感じ」と説明したのだ。

それがいけなかった。
彼らは言った。「そんな危なっかしい演奏するヤツなんて聞きたくない」と。

嗚呼、Rockの神よ。私の言葉を許し給え。
彼らには罪はないのです。私の言葉が彼らをつまずかせました。

「そのうち失敗するんじゃないかと心配になる危なっかしい演奏」というふうに彼らには伝わってしまったのは私のせいだ。

もし、パット・トラバースの日本における評価が実力に比べて低いというなら、そうなった原因の1つには私の発言があるに違いない。(それはないか……)

まだMTVなんて無かったころ、ビデオデッキなんてお宝も実家にはなかった。だから、彼の姿を残しておくすべは当時の僕にはなかった。

時は流れて、よい時代になったものだ。
その伝説のギタリストの演奏を、youtubeで見ることができる。それも "Hooked On Music" をだ。

やっぱり、当然、どこまでも、限りなく、くらくらするほど、なんと言ったらよいか、どうしたらいいかわからないぐらいに、ひれ伏したくなるほど格好いいぞ。

これを見て、「パット・トラバースの嫁になりてぇ!」と思ったとしても恥じることはないと思う。

若いときの失敗はもうしたくない。彼については、これ以上なんだかんだと言わないで見ていただくに限る。
パット・トラバース。
ぜひ多くの方に見て、聴いていただきたい。

アルバムなら、ライブ盤 "Live! Go for What You Know" がお勧めである。

ちなみに、知っている人は知っている (あぁ、二度使ってしまった……) が、このライブ盤でドラムを叩いているのは、トミー・アルドリッチである。
(トミー・アルドリッチがよくわからないというなら、この話しにはもうつきあわなくていいから、布団を被って寝てなさい。)

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