状元楼(JO GEN RO)は、横浜中華街で50年続く上海料理のお店。
ディナーの最中、ちょとしたタイミングの良さで、お店のマネジャーの方とお話をする機会がありました。
この方は、偉ぶった印象はぜんぜんなく、他のスタッフと一緒にお店内に気を配り、お給仕もこなされます。瞳の輝きがとても美しく、自分の仕事に誇りをもっているということが一目でわかる颯爽とした働きぶりの方です。
マネジャーさんによると、横浜中華街の上海料理というのは珍しいのだそうです。いま、横浜中華街の90%以上は広東料理なのだとか。
横浜中華街でマネジャーさんのおじいさまの代から営むお店だそうですが、建物は1年ほど前にリニューアルしたのだそうです。
1920年代の上海をコンセプトにした店内には、古いジャズが流れ、けばけばしくなく落ち着いた豪華さがある調度品とあいまって、ただよう雰囲気は、いつか映画で見たオールド上海と同じ。
あのお店いい雰囲気だよって人に言いたくなる。コンセプトって大事だなぁと感心したしだい。
嬉しいことがあって、お祝い気分でちょっとはりこんでのディナー。僕らが頼んだのは、「珊瑚」という呼び名のディナーコース。デザートを含めて9種類のすばらしい料理が並べられます。
まず出されるのが「本日の五種前菜盛り合わせ」。
特にクラゲが美味しかったです。ぷりぷりして分厚く、口のなかでしっかりした歯ごたえがあって、よくしみた味を感じることができます。僕はそもそも中華の前菜ででてくるクラゲが好きなので、この歯ごたえに最初から嬉しさが全開でした。
次に出てくるのは、「フカヒレの三種盛りスープ」。
やわらかいもの、これまた歯ごたえのあるものと、口に含むたびに食感が変わって、品のよい味のスープもまた嬉しい。
続く「状元特製 上海小籠包」では、うまみのあるたっぷりの肉汁が楽しめます。皮ももちもちとして、これも美味しい。
次は、「スペアリブの紙包み揚げ カレースパイス風味」。
これ、単なるカレー味のお肉と思っていたら大間違い。紙をひらくと、ただよってくるカレーの香りは、きつすぎず、足りなさすぎず、インド料理とはぜんぜん違う表情をみせてくれます。
ややとろみをつけた感じで仕上げっているスペアリブは、箸で軽くつまむとすぐに骨から離れる柔らかさ。女性の場合はルージュが落ちたり、指先を汚したりせずに食べられる嬉しく美味しい一品だと思います。もちろんお味の方も満足。
5品目は、「二種海鮮 <芝エビ&つぶ貝> のあっさり炒め」。嘘偽りのないあっさりした塩味。
あっさりといっても、味の存在感は薄まっておらず、"あっさり"といううま味とはこういうものだと教えてくれているよう。
さて、6品目は、二者択一です。
「牛肉と春野菜のオイスターソース炒め」または「上海式豚バラの角煮 東坡肉」のいずれか。僕らは前者を選択しておきました。これも正解。
入っていた春野菜は、菜の花。菜の花と醤油ベースの味があんなによく合うとは知りませんでした。わずかに感じる菜の花の苦みが、この旨さは子供にはわかるまいという感じの大人の料理。
牛肉の柔らかさもふれておかないと嘘になる。
以前、有名料理人の平野寿将さんがテレビで言っていた話を思い出しました。いわく、「お客に噛みきるという行為をさせるのは、料理に愛がないということ」。まさしくという感じがします。
7品目は、「海鮮すり身ムースの湯葉巻き 空豆ソース翡翠仕立て」。
真っ白なお皿にのった湯葉巻きが先に出され、その上から翡翠の色をしたソースをかけてくださいます。お皿の白と淡い緑の組み合わせがとてもきれいな料理です。
空豆の香りを楽しむことができるソースは、湯葉とすり身の味に深みを与え、引き立てているようです。ソースといっしょに口に含むと、もともと印象の強い味ではない湯葉とすり身という食べ物の味も、とてもよく感じられました。
そして、締めの料理が「旬の青菜と中国腸詰め入りのチャーハン」。
このチャーハンに入っている中国腸詰めには、びっくりしました。チャーハンを口に運んで噛みしめた瞬間に「うわっ。これ美味しいなぁ」ってため息のようにもらしてしまいました。
一言で言ってしまうと、この腸詰めの甘さがチャーハンと合っていてとても美味しい。
でも、"甘さ"と一言で言ってしまったら、この腸詰めの美味しさが伝わらないだろうなと想像できてしまうし、いったいどうしたらいいのだろうと悩んでしまうぐらいに美味しい。
いっしょに行ったお相手は、チャーハンというだけでちょっと軽く見ていたようで「チャーハンなんてどこで食べても同じでしょ」という感じで最初いたのですが、口に含むと僕と同じように、思わず「これ、美味しい」と。
この腸詰めだけでも、中華街のおみやげ物にっていってご商売になるよねって話したぐらいに美味しいです。
状元楼へきたら、腸詰めのチャーハンをぜひ味わってみてください。
最後は、「本日の特製デザート」。僕らが行った日に出てきたのは、マンゴープリン。
柔らかすぎず、絶妙な舌触りがすてきです。たぶん練乳だと思うのですが、少しかけられていて、上の方は練乳の甘さとマンゴーの味を楽しめます。下にいくほどマンゴーの味がはっきりと感じられて、僕はマンゴーの味を堪能することができました。
別にジャスミン茶を頼んで、マンゴープリンといっしょにジャスミンの香りも楽しみながら、お口をすっきりさせて、ディナーは終了。
以上、9品。マネジャーさんのお話も聞けて、2人で本当に美味しく、楽しく、満足感にあふれる時間をすごすことができました。
お祝い事があったら状元楼だねって、僕らの中で決まった日。また行きましょう。
状元楼は、東京の自由が丘にもお店を出しておられます。
(ちなみに、横浜が本店。)
サイトは、こちら。
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