マジシャンとテクノロジー
日本では前田知洋さんに代表される「クローズアップマジック」。最近も、テレビでよくやってますね。昨年からのマジックブームが続いているようです。
より小さくできる素材、より柔らかい素材、肉眼では見えない細さの"糸"などなど、そんな最新素材を駆使してマジシャンは、不思議を見せてくれます。マジシャンとテクノロジーは切っても切れない関係にあるようです。
クローズアップマジックの場合、多くは指先の精妙な動きでボールやカード、コインをコントロールしているかと思いますが、それでもマジックに使う素材の研究は欠かせないものなんだろうなと思います。
でも、テクノロジーはときに、マジシャンという職業の根底を脅かすこともあります。
先日あるテレビ番組で、某マジシャンがコインを消したり、出したり、大きさを変えたりしていました。
最後の方では、マジシャンが片手に持っていた小さな数枚のコインを、一瞬で巨大な1枚のコインに変えてみせてゲストのタレントさんたちをびっくりさせていました。
僕は仕事から帰ってきて、録画してあったそれを見ていたのですが、そのコインが巨大になる瞬間をじっくりと見たいとふと思って、デッキでコマ送りの再生をしてみました。すると、コインの大きさが変わろうとするまさにその瞬間、タネがちらっと見えていました。
それは一瞬の早業でした。普通の速度で再生すると見えませんから、スタジオにいるタレントさんにも、絶対に見えていないと思います。
ですが、もう一度コマ送りで再生すると明らかにコインを入れ替えている瞬間を見ることができました。
一度わかってしまえば、普通の速度で見えなくても、あのときに変わっているんだという瞬間には気が付くことができます。
マジシャンの中にはスローで再生してもぜんぜんタネがわからないマジックを披露する人もいます。
僕が見たその人は、運が悪かったのか、油断したのか、あるいはマジシャンとしては今ひとつの技術なのか、とにかく、いろんなやり方はあるでしょうが、コインが巨大になるマジックの1つのやり方を、デッキのコマ送りというテクノロジーで僕は見つけることができました。
テクノロジーの進展は、マジシャンの皆さんにいろんなイマジネーションを与えて、すてきなマジックをたくさん生み出す要因になるでしょう。
けれど同時に、ハイビジョンやハイスピード撮影などどんどん高度なものがでてくると、テレビカメラにタネやトリックを写されてしまうという危険性も発生します。
マジシャンの皆さんは、さらなる高見を目指して技術やアイデアを磨き上げていかないといけないんですね。
どんなテクノロジーが現れてきても、マジシャンのみなさんにはそれを乗り越えて、これからも僕たちを不思議の世界へ連れて行って欲しいなと僕は思っています。
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コメント
はじめまして、KOJIといいます。
ミツさんのおっしゃるとおりです。
テクノロジーの進歩は色々な意味で
マジシャンを苦しめています。
こんな時代ですから、あれは機械仕掛けに
なってるんだから不思議でも何でもない!
の一言で解決してしまいかねません。
映像に残るので、TVの前ではネタも
慎重に選ばなければなりません。
しかし、今はまさにマジシャンたちの
真価を問われている時期だと思います。
1マジシャンとして挑戦を続けていきたいと
思います。(まだデビューしたてですが^^)
ミツさんのような理解のある方がいらっしゃる
と知って嬉しい限りです。
投稿: KOJI | 2005.01.13 11:39
KOJIさん、いらっしゃい。
プロフェッショナル・マジシャンの方にコメントいただけるとは思ってなかったです。
クローズアップマジックがよくテレビで取り上げられるのは、番組の制作費という面で仕掛けの大きなマジックよりも安上がりですし、カメラを近づけて撮る緊張感もあったりして、テレビ向きなんだろうなと思っています。
引田天功さんのような大がかりなマジックを得意としている人たちには、お仕事が脅かされる時代なのかも。
逆に言えば、クローズアップマジックを得意としている人たちが、世の中に打って出ることができる時代。
KOJIさんも諸先輩方に負けないようにがんばってくださいね。
投稿: ミッ君 | 2005.01.16 00:01