むすめ師
本日(2004年10月6日)の日経新聞の最終ページ「文化」の筆者は、元警視庁捜査三課の刑事で、退官後はそれまでの経験を生かして防犯アドバイザーをされておられる稲田淳夫(いなだあつお)さん。
「むすめ師」という言葉は、昔の"蔵破り"、つまり泥棒のこと。
蔵の白壁を"娘さんのおしろい顔"に見立てた隠語だそうです。(ちょっと変なことを考えている人いたでしょ? 反省するように)
「鍵と錠前」との付き合いは、刑事時代もふくめると40年を超えるとか。
長いキャリアを積む内に、稲田さんは、鍵の壊し方でそれが初犯かベテランの仕業かを判別できるようになっていたそうです。
稲田さんは「和錠」の収集もされてます。
「和錠」というのは、日本の鍛冶職人によって作られた日本生まれの錠前のこと。
コラム「文化」で、稲田さんが説明している「商家の蔵のものと思われる錠前」の仕組みが、なかなかすごい。鍵を外して扉を開けるまでに8つの操作をしなければなりません。
特にすごいなと僕が思ったのは、鍵穴の工夫。
普段は鍵穴が見えない状態になっていて、それを見えるようにするためにだけ、5段階に渡る操作をします。(へたしたら忘れちゃうよ)
その後、「かかっている鍵を外す操作」があって、最後に「鍵が外れた扉を開ける操作」もします。
鍵を外しただけではまだ扉を開けられないという厳重さ。
錠前の写真付きで手順の説明がされているのですが、職人技の美しさだと思いました。
よく言われることですが、手間がかかるところには泥棒はよりつかないそうです。
稲田さんも「ワンドア、ツーロック」を勧めておられます。それだけでなく、貴重品を納めているところには、3重、4重の鍵を勧めてもおられます。
40年を超える経験によって稲田さんがおっしゃるには…
「備えた家だけ助かりなさい」
なんだそうです。
悲しいことや物騒な事件が起きるこのごろ。
日本も、まず自己防衛が基本という国にもうなってしまったと僕は思っています。
何も知らない時代なのに、「むすめ師」の出現が大ニュースになったであろう時代が何となく恋しく思われます。(被害に遭った方はたまらないでしょうけど)
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